女子高生夏希のイケメン観察記

同じ肉体がもたらすとは思えない、不敵な笑みを携えた様子に私はあわてて一歩遠ざかる。

「クロは見つかったか?」

器用に片目だけを動かして、低い声で伊達さんが聞いた。
私の脳裏に過ぎるのは、リノリウムの床に傅いた母親の姿。

「……見つけたとしたら、何だっていうんですか?」

軽い問いかけにしたかったのに、口に出した私の声は重苦しい緊張感を纏った上に、不安そうに震えていた。

それが可笑しかったのか。
伊達さんはクっと喉を鳴らす。

「余の前に連れて来い」

「嫌です」

「……ほぉ?
 そちの望みは余にばっさりと切り捨てられることなのか?
 奴の打つ刀はどれもこれも一級品だ。
 痛みも覚えずあの世に行くことができるだろうよ」

伊達さんの仕草は、太刀に手をかけるものになってはいたが、もちろん、今、彼は刀など携帯してはいない。
懐に、短刀を忍ばせていることは知っていたので、私はそれにだけ注意することにした。

太刀を携帯していないことに気づき、チッと、伊達さんは軽い舌打ちでいまいましさを押し殺す。