女子高生夏希のイケメン観察記

ドキドキしながら、私は病室の前で待った。

『千崎一夏』 病室の前に母の名前が貼ってある。
海がよく見える部屋を、病院のご好意であてがってもらっていた。

それが、どれほど母の慰めになっているのか、私には分からない。

慰めなんて、必要なのかも。

「とりあえず、私。
 一人で入って見ます」

そういうと、智さんはすっと手を放してくれた。

「どうぞ」

先生は部屋から出た。

私はドキドキしながら病室に入る。
上半身を起こした母は、抜け殻のようにぼおと海を見ていた。

「お母さん、元気?」

私に目を向ける。
その、虚ろな眼差しに、二の句がつけない。

元気なわけ、ないのに。


私、何を言ってるのかしら。