それでも、智さんの手を掴めばぐらついていた気持ちが少しだけ落ち着いた。
私は決意を固めて顔をあげる。
くらり、と一瞬眩暈を覚えたのは、智さんの高い鼻梁に目が釘付けになったせい。
うん、多分。
気持ちが揺らいだわけじゃないわ。
ぎゅうっと、握る手に力をこめながら唇を開く。
「ここに、母親に、逢いに来たの」
「お母さん?」
「そう。
長い間精神を患って入院しているの。
でね。
伊達さんが私に言ったんだ。
『イチカ』か? って。
それ、母の名前なんだよね。千崎一夏って言うの」
私の言葉はぽつりぽつりと、まるで水玉模様のように断続的にしか紡げなかったけれど、智さんは視線をそらすこともなくしっかりと私の話を受け止めてくれていた。
もちろん、イチカって人が世界に一人しかいないわけじゃない。
けど。
だからこそ。
確かめてみたかったのだ。
私は決意を固めて顔をあげる。
くらり、と一瞬眩暈を覚えたのは、智さんの高い鼻梁に目が釘付けになったせい。
うん、多分。
気持ちが揺らいだわけじゃないわ。
ぎゅうっと、握る手に力をこめながら唇を開く。
「ここに、母親に、逢いに来たの」
「お母さん?」
「そう。
長い間精神を患って入院しているの。
でね。
伊達さんが私に言ったんだ。
『イチカ』か? って。
それ、母の名前なんだよね。千崎一夏って言うの」
私の言葉はぽつりぽつりと、まるで水玉模様のように断続的にしか紡げなかったけれど、智さんは視線をそらすこともなくしっかりと私の話を受け止めてくれていた。
もちろん、イチカって人が世界に一人しかいないわけじゃない。
けど。
だからこそ。
確かめてみたかったのだ。


