女子高生夏希のイケメン観察記

やっぱりここは一生の思い出になるわけだし、セオリーどおり(?)瞳を閉じよう、と決めた途端。
至近距離で止まった智さんが、その紅い唇の端を歪めて、甘いと形容しても問題ないような笑みを作った。

「やっぱり、夏希ちゃんってシロそっくり」

そうして、楽しそうにクツクツと笑い出し、私から顔を放してしまった。

……へ?

今、キスをしようとしていたんじゃ、ないの!?

「あ、あの。
 シロってなんですか?」

伊達さんが言っていた、「クロ」という言葉に呼応するようなその名称に私はとりあえず質問してみる。

「え?
 白い猫の愛称。
 公園で拾ったんだよねー。
 その円らな瞳が、もう。
 夏希ちゃんにそっくりで」

放っておけないんだよなー、なんて呟いてらっしゃるんですが。


えっと。
智さんって私のこと、「猫みたいに」気に入ってくださっているだけ……なんですか?


くぅ。
悔しいけれど、久遠さんの言ったとおり。

智さんが拾うのは猫と霊だけ、みたいです。