「で、どちらにお連れすれば良いのかな?
お嬢様」
勝手に久遠さんの車に乗り込んだ智さんがエンジンをかけながら問う。
本当、和服とは決して似合いそうに無いこんなスポーツカーだって、智さんの手がハンドルにかかればしっくりきているように見えるから不思議。
助手席に乗った私が顔を左に向ければ、高い鼻梁が目に入る。
そして、智さんの黒い瞳は何を遠慮することもなく真っ直ぐに私を見つめていた。
ドキン、と、心臓が跳ねる。
「シーサイド病院」
「……って、何処の海の近くにあるんだっけ?」
私はもうしばらく行ってないその病院への道のりを、ゆっくり説明する。
「なんかさ、夏のオープンカーって、馬鹿みたいに暑いよね。
これ、絶対に日本の風土に合ってないって」
「イタリアには合うのかな?」
まだ見たことの無い国の名前を口にする。
「どうだろうねー。
でも、合わないんだったら開発しないんじゃない?」
風の音が煩くて、いつもより張り上げる智さんの声すら、耳に心地良く感じる。
好きっていう気持ち越しに見る風景は、全てが煌いて見えるから、本当に不思議。
だから。
智さんと雑談を交わしながら走る病院までの道のりは、なんとかやり過ごすことが出来たのだ。
お嬢様」
勝手に久遠さんの車に乗り込んだ智さんがエンジンをかけながら問う。
本当、和服とは決して似合いそうに無いこんなスポーツカーだって、智さんの手がハンドルにかかればしっくりきているように見えるから不思議。
助手席に乗った私が顔を左に向ければ、高い鼻梁が目に入る。
そして、智さんの黒い瞳は何を遠慮することもなく真っ直ぐに私を見つめていた。
ドキン、と、心臓が跳ねる。
「シーサイド病院」
「……って、何処の海の近くにあるんだっけ?」
私はもうしばらく行ってないその病院への道のりを、ゆっくり説明する。
「なんかさ、夏のオープンカーって、馬鹿みたいに暑いよね。
これ、絶対に日本の風土に合ってないって」
「イタリアには合うのかな?」
まだ見たことの無い国の名前を口にする。
「どうだろうねー。
でも、合わないんだったら開発しないんじゃない?」
風の音が煩くて、いつもより張り上げる智さんの声すら、耳に心地良く感じる。
好きっていう気持ち越しに見る風景は、全てが煌いて見えるから、本当に不思議。
だから。
智さんと雑談を交わしながら走る病院までの道のりは、なんとかやり過ごすことが出来たのだ。


