「じゃ、大した質問もなさそうなので。
 次に行きます」

奏さんは慣れた感じでこの場を仕切っていた。

感心して眺めている私を、奏さんが見る。
不意打ちの視線にどきりとした。
いつものように柔らかい笑顔を浮かべている。

「なっちゃんの気になる、伊達ちゃんの言葉って何?」

それは、軽い口調だったけれど、三人の視線が私に向いて、思わず口篭ってしまう。

「……それは」

それは、出来れば言いたくない。
嘘であって欲しいことだから。

認めたくないし、信じられない。

「本当かどうか、明日確かめて来たいの。
 仕事が終わってから、少し抜けさせてもらってもいいですか?」

「じゃあ、その伊達ちゃんの責任を持って、俺が車を出すってことで、いいんじゃない?」

……っていうか。
智さんまで『伊達ちゃん』って呼ぶの?
そんなにカジュアルかつフレンドリーな感じで接してるのかしら?
霊とは、いつも?

と、本題とは関係ないところで一瞬怯んだものの、その私を見つめる智さんの、素敵な眼差しに飲み込まれて、ほとんど無意識のうちにこくりと頷いていた。