どうしよう、まさか太一の処に行くつもり?いきなり行ってどうするわけ?色んな疑問が私の頭の中を駆け巡った。
「お客さん、終点ですよ」
「あっ、すみません」
運転手に声を掛けられつい降りてしまったけど、さっきの疑問がまた戻ってきた。行って何するの?引っ越してから五年も経ってるのにまだ幼なじみのつもり?
やめよう。
何度もそう思うのに私の足は止まらない。
心臓がうるさく鳴る。
そしてついに私はあの懐かしいマンションに着いてしまった。三階建ての黄色いマンションは何も変わらずあの日のまま私を迎えてくれた。そのまま私は自転車置場の前に行く、そこから見上げると二階に太一の家の玄関のドア、三階に私の家のドアが見えるのだ。
よく太一がドアの前に、そして私はこの位置に立って話をしてたことを思い出す。それが妙に懐かしくて、思わず携帯を取り出す。記念写真とか撮ってしまおうかしら…そして私は再度上を見上げた。
うそ…
そこにはあの時と同じように太一が柵に腕を掛けて立っていた。
「何やってんの?」
太一が笑いながら私にそう聞いてきた。そこで私は自分があまりにもおかしい行動をとっている事に気付き、慌てて携帯をしまった…はずだったのに…
カシャッ
え…?
自分で自分が何をしているのか気づくのに多少の時間が必要だった。指が震えて押してしまった気もするし、自分の意思で押した気も少なからずする。というか私は、今、昔好きだった人の住んでいる家の写真を、撮リマシタカ…?
…でも絶対変な人だと思われてる。むしろストーカーという犯罪者に間違えられているはずだ。
私は被写体をもう一度見る為に恐る恐る顔を上げた。
