「その4.6の子って誰なんですか?」
なかなか説得をやめない担任に、冷たい表情をして聞いた。先生は一度は言えないと言ったけど、私の冷静な目を見て言わなければ状況が変わらないとでも思ったのだろう、渋々相手の名前を漏らした。
「河村綾だ」
自分の表情が崩れたのが分かった。
河村綾は私の親友だ。
彼女は私と違って努力家で、いつも私を頼ってくれた。テニスで日本一になれるだろうと言われていて、部活は違うけれど私と同じく期待の新人として入学してきた。
スポーツ推薦でいい大学に必ず行くんだと笑いながらいつもそう言っていた。
でも、その願いは3年生の6月、インターハイ予選の前で叶わぬものとなった。
ある日階段を登っていると、前にいた2人の2年生がふざけだし、1人が階段を踏み外し、そのまま綾を巻き込んで転がっていったのだ。
その2年生は幸い大した怪我もなかったが、綾は肩から落ちて全治2ヵ月の傷を負ったのだった。
事故の直後綾は大粒の涙を流して泣いていた。
「ど…うしよう、アキ…試合…試合…」
綾は私に抱きついて離れなかった。
結局インターハイ予選には間に合わなかった。
綾はギプスをはめながら自分の出るはずだった試合を無表情で眺めていた。
あの時私がかばっていれば、綾はこんなことにならなかったかもしれない。
私の中にはいつも自責の念があった。
私は先生を見つめ、さっきまでは思ってもいなかった言葉を口に出した。
「先生、私指定校いりません」
なかなか説得をやめない担任に、冷たい表情をして聞いた。先生は一度は言えないと言ったけど、私の冷静な目を見て言わなければ状況が変わらないとでも思ったのだろう、渋々相手の名前を漏らした。
「河村綾だ」
自分の表情が崩れたのが分かった。
河村綾は私の親友だ。
彼女は私と違って努力家で、いつも私を頼ってくれた。テニスで日本一になれるだろうと言われていて、部活は違うけれど私と同じく期待の新人として入学してきた。
スポーツ推薦でいい大学に必ず行くんだと笑いながらいつもそう言っていた。
でも、その願いは3年生の6月、インターハイ予選の前で叶わぬものとなった。
ある日階段を登っていると、前にいた2人の2年生がふざけだし、1人が階段を踏み外し、そのまま綾を巻き込んで転がっていったのだ。
その2年生は幸い大した怪我もなかったが、綾は肩から落ちて全治2ヵ月の傷を負ったのだった。
事故の直後綾は大粒の涙を流して泣いていた。
「ど…うしよう、アキ…試合…試合…」
綾は私に抱きついて離れなかった。
結局インターハイ予選には間に合わなかった。
綾はギプスをはめながら自分の出るはずだった試合を無表情で眺めていた。
あの時私がかばっていれば、綾はこんなことにならなかったかもしれない。
私の中にはいつも自責の念があった。
私は先生を見つめ、さっきまでは思ってもいなかった言葉を口に出した。
「先生、私指定校いりません」
