大切な時間

　今オレ達は無言で向かい合って座っている。

　もともとオレは彼女の名前さえ覚えてなかったんだから会話など続くわけがない。

｢えっと…フジミちゃんは名字なんだっけ？｣
　オレは必死で会話をつなげたつもりだった。

｢え？富士見…｣
　彼女が驚いたように言う

　しかしオレの方がびっくりして
｢え！？富士見ふじみちゃんなの？｣
　と聞いた。

　すると彼女は急に笑いだした。
　どうやら富士見は名字で、名前は由香だったらしい。普通にフジミって名前なのかと思ってた。オレは自分の馬鹿さにびっくりしていた。

｢晃太君のそういうトコが大好きなの｣
　と由香は笑いながらさらっとすごい事を言った。

　流した方がいいのかな。

　そんなことを思ってると由香が真面目な顔になっていた。

｢ほんとだよ？｣


　気付いたらオレから彼女に告白していた。

　由香はそれを聞いてすごくかわいい笑顔で頷いた。

　いつも勢いで人と付き合ってきた。だから全然続かなかったけど、今度こそうまくいくといいな。

　だけど、アキの顔が一瞬浮かんだのはなんでだろう。