大切な時間

《晃太》
「今日暇?」
 なんだよいきなり。

「ははは、藤崎さんかわいいんだからオレなんか誘わなくても…」
「フジミです。」
 あ、何、下の名前で呼ばれたいのかな。フジミちゃんはオレの机に手をついて話しだした。

「晃太君暇なんでしょ?知ってるよ、いつも用がないのに学校に残ってるの」
 フジミちゃんはいきなりオレの呼び方を変えて、オレの行動を語りはじめた。

「昨日は1年の子と一緒にサッカーやってたよね?」

 いつも帰らなかったのは家に帰りたくなかっただけなんだけど。イメージの違う彼女に俺はただ圧倒されるだけだった。
 断りたかったけど、あまりにもオレが暇すぎることがばれているから仕方なく了承した。

 チャイムが鳴ると
「じゃあ帰りにね」
 と言って彼女は自分の席に戻っていった。


 帰りのHRも終わり、帰ろうとするとフジミちゃんが近づいてきた。

「晃太君帰ろっ」
 フジミちゃんは満面の笑みで言った。
 その笑顔が本当にアキに似てて…一瞬ドキっとしたけど、それとともにチクっと何かが刺さったような気もした。


「どこにいく?」
 そんな思いも知らな彼女はオレに尋ねる。
 あんまり期待させないようにしよう
「マックでいい?」
 オレが聞くとフジミさんは少し戸惑った顔をしたけど、オレはそれを見ないようにして歩きだした。

 最寄りの駅は綺麗な建物がある割に何もない。遊ぶ場所なんかカラオケとゲーセン1ヶ所づつしかなくて、そこは毎日寄り道をする高校生で混みまくっていた。