大切な時間

 コンビニからの帰り道、アキともう少したくさん話していたくて母さんをダシに家に来てもらった。帰らないで欲しかったから家に呼んだのだが、母さんとばっかり話して少し落ち込む。

 大人になろうと思っていたのに、アキが俺を昔の俺に戻そうとしているみたいで戸惑った。だけど逆にそれが心地よかった。アキとの再会は俺に刺激を与えてくれた。アキが帰ってしまってからもずっとまたアキに会って話したいと思っていて、晃太がうちに来たときはすぐにアキを呼んだ。
 三人でまたこうして一緒に過ごせるとは思っていなかった。それが思った以上に嬉しくて、嬉しくて。

 今日は五年ぶりに幼なじみと行く花火大会だ。
 最近の地元の祭では男でもじんべいや浴衣を着るのが当たり前になっている。祭に参加する側が多いからだ。晃太には浴衣を貸したけど、スタイルがいいせいか、全然似合わなかったから俺が浴衣を着ることになった。身長はあんま変わらないのに…。

 そろそろ暗くなりかけて来た頃、約束した時間の少し前に着いたバスから降りてきたアキに動揺した。昔のアキの性格なら大人っぽい紺の浴衣を選ぶと決め付けてた。
 でもアキは淡いピンクの浴衣を着ていた。それがすごく似合っていて、アキが変わってしまったのがわかった。
 昔は俺と対等だったのに。
 今は守ってあげなきゃいけないと強く思う。幼なじみってみんなこんな感じなのかな?

 早く見つけだしてあげなきゃ。俺が守ってあげなくちゃ。想いは募るばかりで彼女は見つからない。三十分後に銅像の前で、その時間が間近に迫っている。

 「困ったな…」
 ふと見た河原のうえにピンクの浴衣の子がいた。でもその子は独りじゃなくて、見慣れたじんべいの男と二人で座っていた。

 違う。そう思おうとしたけどその二人は明らかに俺の知る二人だった。

 「ハァ…ハァ…」
 走りすぎた。俺は無意識に胸の中心を押さえる。

 ズキン

 そのまま俺は木の側に座り込んだ。