大切な時間

 三人で歩きながら会場へと向かっていると、突然二人は私を見て何か企むように笑ったかと思うと、走りだした。

 …え?

「ちょっ…待ってよぉ」
 当然二人の後を追いかけたが、浴衣だと全然走れずいつのまにか二人の姿も見えなくなっていた。途中でどこかから出てきてくれると思ってたのに、なんとついに会場に着いてしまった。

「なんていじわるなの!!」
と心の中で叫んで私は会場へ入るのだった。

 しかし二人とも、どこに行っちゃったんだろう…。会場はまさに人の波で人を探すのは困難だ。携帯で連絡を取ればいいんだと気づき腕に掛けた巾着から携帯電話を取り出す。そして画面を見ると、

「しばらくお待ちください」

 どうやら人が多すぎて電波が使えないらしい。なんて使えない携帯なんだと携帯と睨み再度巾着へと押し込んだ。

 はぁ。折角来たのに。
 私の口からは大きなため息がこぼれる。まさか私実は二人に嫌われているのかしら。それなのに浮かれて来てしまった馬鹿な女なのか?と自己嫌悪に陥っていると、突然肩を叩かれた。
 やっと来てくれた!と思い期待を膨らませぱっと後ろを向くと、灰色のじんべいを着て金のネックレスをした全然知らない人が立っていた。

「ねぇ1人?可愛いねー。俺も1人。一緒に花火見なーい?」
 というものの確実に彼の知り合いであろう人々が数人後ろの方で見守っている。

「連れがいるんで」
 と言って断ったが、嘘だと思われているのかいなくなってくれない。最大限にきどっているのだろうが格好がつかない顔を近付けてくる。
「いいじゃーん、花火見るだけだし、ね?」
 しつこい。思いっきり嫌な顔をしているのに気付いてくれない。

「ね、行こう!」
 と言ってそいつは私の腕を掴んだ。


「俺の連れになんか用?」
と言う声と共にさらにその腕を掴まれた。