大切な時間

 しかし、晃太変わったなあ。私がすぐにわからなかったのも無理もない。小学生の時はすごくおとなしかった。太一とは痩せてるところだけ一緒で、あとはオセロのように見た目も性格も正反対だった。今も色が黒いのは変わらないけど、すごく性格が明るくなってる気がする。
 太一は五年前と変わらず接してたけど、私はその変化にすぐに対応できなかった。

「アキ可愛くなったなぁ」
 と晃太が前は絶対に言わなかったような事を言ってきて、少しどきっとした。何が晃太をこんなに変えたんだろう。

「何言ってんの。晃太も五年で大分変わったね」
 平常心を保ちながら言ったつもりだったが、
「誉められると赤くなるとこ変わらないねっ」
 とこの前と同じ事を言われてしまった。

 三人で話してると、意外と三人だけで話したことがないことに気付いて、共通の思い出が少なかった。三人でいた時は、駐車場で二人がバスケをしてるところを私がにこにこしながら見ていたことくらいだ。
 話題はお互いの進路の事になって、太一は大学に推薦で、晃太は美容師の専門学校に行くと言った。
「なんだみんな受験らしい受験しないんだな」
 と太一が笑った。
「じゃあこれからも三人で遊ぼうよ」
 と晃太がはしゃぎながら言った。

「じゃあ早速だけど君たち明日暇かい?」
 太一がどこか嬉しそうにそう尋ねた。私も晃太も時間を置かずにうんと頷く。

「覚えてるかな?八月の二十日が何の日か…」
「花火大会っ!」「花火大会か!」
 太一の問いに私と晃太の声が重なった。太一は私たちの反応に満足そうに笑った。

 ついこの前までつまらない毎日を送っていたのに、あの日から私は少しずつだけどまた輝きだしてきた気がする。私たちは次の日の花火大会の約束をして太一の家を出た。その時の一歩がすごく軽かった。