大切な時間

-----------------------------
from:太一
subject:Re2:無題
-----------------------------
すまんがすぐに来てくれ
-----------------------------
 
 …なんじゃこりゃ?
 とりあえず私は図書館を出て、太一に会えるという期待と少しの不安を胸にバス停へと急いだ。バスの中でもう一度返事を送ったけどすぐには返って来なかった。それが私の不安を膨らませる。

 バスが着いてドアが開いた瞬間私は走った。
 どうしてヒールのあるサンダルなんて履いてきてしまったんだろう。自分の足の遅さがもどかしくてマンションが遠く感じた。

 ようやく着いて、エレベーターのないマンションの階段を駆け上がり太一の家のインターフォンを鳴らした。

 ガチャ

 ドアの向こうから太一の顔が現れた。
「入って」
 と太一は私を家の中に入れた。すると懐かしいような、けど見知らぬ顔がそこにいた。

 その人は私の顔を見るなりにやっと笑い、
「久しぶりー」
 と言った。

 …あ。思い出した。

「こーた!何してんの!?」
 そのこーたというのは、本名は鈴木晃太。実はこのマンションに住んでいた幼なじみは太一だけではなく晃太もいたのである。晃太も私と同じ時期に引っ越しをして、確か鹿児島に行ったはずだった。

 でもどうしてここに?私の思っていることがわかったのか、晃太が説明をしだした。

「もともとうち両親が離婚して母親に引き取られて引っ越したじゃん?
オレも十八になったし、自立したいからさ、思い出の地東京に戻ってきたわけ」
 と自信満々に言う晃太に、
「学校は?」
 と聞くと晃太は
「北高に行くんだぁ」
 と言い、学費を出してもらうと自慢気に言った。それは自立と言うのか…?晃太が通うという北高は近所では有名ないわゆる"おばか"な学校で、親たちは北高に行かせるくらいならフリーターの方がましだと言う程の自由な学校である。

 晃太は前からお母さんの事が好きでなく、今回一人暮しをする決心をしたのだとか。確かにあのお母さんは私もあまり好きではない。晃太は以前太一の家の隣に住んでて、太一の家で遊んでいる時いつも怒鳴り声が聞こえた。