「お前さぁ…
俺をそんな本気にさせたいの?」


「…え?」


フワっと湊の香りに包まれる。


涙を見られたくなくて顔を隠そうとしても、湊の手に阻まれて上手く隠せない。


そんなことをしているうちに、湊はあたしの顎をクイッと指で持ち上げた。



夜風の寒さなんかも、湊に包まれていて感じない。


ふとした瞬間、あたしの唇になにかが触れた。



「普通、目くらい閉じるだろ?」


あぁ…


キスされてるんだ。


一度目は突然。

二度目はゆっくり。



言われるままに目を閉じたあたしにまた優しいキスが落とされる。




湊はどんな気持ちでこんなことをするの?



あたしの初めてを奪ったのは全部湊。


抱き締められるのだって
ファーストキスだって…
恋の相手だって……


たとえ湊の初めてがあたしじゃなくても……



あたしにとっての初めてが湊だったから…




忘れられない。



あたしは湊の温もりしか知らない…。



「なんでまた泣くんだよ?」


「湊……あたし、あたしね?」



嬉しくて涙が出るほど…