「プリンセスとナイトの伝説…?」


「少し長くなるけどいいか?」


「うん」



「これは、俺がこの学園に初めて来た時…

プリンセスルームで見つけた古い古い本に書いてあった話だ…」




あたしは湊の言葉に吸い込まれるように聞き入った。


「昔…
まだプリンセスがいない時。

ある美女が突然この学園に来たんだ。

その美女は周りに誰も寄せ付けなかった。
笑いもせず、毎日無表情。

やがて彼女は氷のプリンセスと言われるようになった。

けど、そんな彼女を笑わせたヤツが一人だけいたんだ。

そいつがナイト。

彼女の笑った顔は、世界一と言えるくらい綺麗で魅力的だった。

やがて二人は惹かれあい、恋に落ちた。

彼女の氷もいつの間にか溶けてよく笑う明るい子になった。


彼女は彼を信頼し、また彼も彼女だけを信頼し愛し続けた。


けれど問題は二人の身分の違いだった。


プリンセスは貧乏なんて言葉に無縁のお金持ち。

ナイトは貧しい暮らしをしている一般人。

親に反対された二人は駆け落ちして、

身分も何もかも関係ない
“死の世界”で結ばれることを選び愛し続けた……


って話だよ」





「……そんな伝説があったんだ」


「―…梨緒、その顔反則!

てか泣くなよな!!」


「え?」


あたし泣いてる??