―愛彩―

和人様は、それまで以上に生き生きとされておりました。

会社へ顔を出すときも、社長の看板を下ろされた、ただの『おじさん』のようであり。

新しい家庭を築かれた、優花さんのところへ赴くときも、やはり『叔父さん』の顔。

趣味を同じくする仲間たちの中では『ひとりの男』として。

年齢で言えば、70歳近い『お爺さん』になるのかもしれませんが、和人様にはとんでもない事でございました。


いつまでも、若々しくて・・・。


私も和人様の傍で、その『生きる力』を分けてもらっているような、そんな気がしていたのでございます。

和人様の身の回りのお世話をさせて頂けること。

それは私が8歳、和人様が6歳の時から続いてきた事でした。

今となっては、それこそが私の生きがい。

和人様がこの世に生ある限りは、私も生きていく。

和人様の最後の時まで、私はしっかりと生きていこう。

『最後』とは言うものの、私の中で、まだ実感は沸いてはおりませんでした。








和人様がお倒れになるまでは―――。