―愛彩―

「和人くん。うちで働かないか?」

それは長谷川さんの言葉。

和人様は最初のうちは、冗談だと思っていたようで、

「そんな、お世話にはなれませんよ。」

軽く笑っておられましたが、長谷川さんの気持ちは真剣でした。

「和人くんのような人が来てくれたら、本当に助かるんだよ。」

「・・・。」

「本気で考えてみてはくれないかね?」

長谷川さんは、和人様の目をしっかりと見ていらっしゃいました。

私は思わず、二人の間に割って入っておりました。

「・・・良いお話じゃありませんか。」

「みちるさん。」

「和人様を一人の男として、見込んでおっしゃられてるんですから。」

私の言葉はさておいたとしても、和人様は長谷川さんの誘いに対し、真摯に向き合おうと考えるようになられたように感じられました。

和人様が、長谷川さんの仕事に携わる事。

それは、再び篠宮のお屋敷にいた頃のように、和人様のお世話をさせて頂けるという事。

とっさの私の一言には、私自身の
“よこしまな気持ち”
が入り混じっていたのです。



――和人様のお傍にいられるのなら・・・。

私の心は揺らぐことを知りませんでした。