中に入ると見慣れた背中が目に入った。
寝転び、尻をポリポリと掻きながら大声でテレビに笑っている。

「…借りてきたぞ」

涼がそう言うとその背中は勢いよく振り返り、満面の笑顔を見せた。

「やった!ありがとね、涼ちゃん!!」


この女こそ、涼の悩みの種…。
伊武泰子(いぶたいこ)である。


「涼ちゃん!突っ立ってないで早く観ようよ!」

泰子は部屋の入口で突っ立っている涼の足をぐいぐい引っ張り、洋服や漫画が散乱した床へと座らせた。

「…………」

「じゃあ、再生しまーす!」

ウキウキしながらDVDをセットしている泰子の姿を見て涼は再び溜め息を吐いた。

「泰子。ちょっと一人で観てて」

「ん〜?了解〜」

泰子は始まった映画に夢中になっていて涼の言葉には関心がないようだ。

そんな泰子をよそに涼はムクっと立ち上がり、ワイシャツを腕まくりした。
まさに戦闘態勢だ。