さよならとその向こう側



私は――




「――実が好き。自分から別れを告げたけど、それでも、忘れる事なんて出来なかった。だから――」




“側にいたい”



そう告げようとしたけど、そっと近づいて来た実の唇に遮られた。



優しく甘いキス。

それは私の心を解放して、不安を消してくれる。


会いたかったと
愛してるが
沢山溢れて来る。


目を閉じ唇を重ねているだけで、この世界にたった二人きりになった様な錯覚に陥る。


煩い蝉の音も何もかも、聞こえなくなる。

周りの音が消える。




聞こえるのは、二人のキスの音だけだった。