さよならとその向こう側


懐かしい、大好きな実の腕の中。


相変わらずドキドキして、でも安心できて、何より嬉しくて。

余計に涙が溢れてくる。


「お父さんとお母さんの前で、不謹慎かな?」


「え・・・?」

頭の上から聞こえてくる言葉に驚いた。


「どうして、知ってるの?」



ここに、お母さんも眠っている事を、どうして知っているの?

実の顔を見上げると、申し訳なさそうに微笑んだ。


「ニュースで、彩夏のお母さんの遺体が発見されたって知った。」


確かに、新聞に小さな記事が掲載された。

それを見て、志乃も連絡をよこしてくれたから、実が知っていても不思議はないのかも。



「彩夏?だから、日本に来たんだ。彩夏に会いに。」


「え?」


実は抱き締める手を緩めない。

私を見つめるその瞳は甘くて輝いていて、ドキドキしてしまう。


「事件は終わったんだ。もう、彩夏は何も引け目を感じる事なんかないよ?」


実の言葉を聞いても、なんて言っていいのかわからない。

私が殺人者の娘である事は変わらない事実だもの。