さよならとその向こう側

「ほら、これ使いな。」

「ありがと。」


目の前に差し出されたおしぼりを受け取り、テーブルと床を拭く。


・・・ん?今の声。

不思議に思って顔をあげると、

「俺も聞きたいな、返事。」

少し意地悪そうに微笑む敦が立っていた。


「??!!」

また驚いて、今度は言葉に詰まる。

それから、顔はどんどん熱を帯びていく。


「まぁまぁ、そんなに焦るな敦♪」

反対側には楽しそうに私達を見ている亜沙美の姿。

「私は売り場に戻ってあげるから、せいぜい楽しんでくださいな♪」

そんな事を言って、ひらひら手を振りながらカフェテリアを出て行った。


もう~!!亜沙美のドS!!


床は拭き終わったけど、恥ずかしくて立ちあがれない!!

敦の顔見れない!!


しゃがみこんだまま固まっている私を見て、敦はフッと笑った。

「しかし、亜沙美にはかなわないな。俺、ずっとからかわれ続けるのか!?」

「・・・・・・」

「綾?聞いてる?」

「・・・うん。」

返事はしたものの動けない私。

すると、突然敦はしゃがみこんで、私の顔を覗き込んできた。


「うんって。・・・俺の顔見ろよ?」

見ろって言われても、恥ずかしいし。変に意識しちゃうし。
きっと今だって、顔は真っ赤な茹でたこ状態。