さよならとその向こう側

「そう言えば、敦の所もう父の日の準備してる?」



亜沙美が話題を変えたのは、きっと敦の言葉に納得したからだろう。


私もそれ以上突っ込んで聞き出す気にもなれなかったから、この話はこれで終わりになった。



「そっかぁ父の日か。うちの店関係無いから忘れてた…。今年は何あげよう?」

本当にすっかり忘れてた。

最近の考え事といったら"神田実さん"ばっかりだったから。


「なんか、今年お薦めのプレゼントある?」


父の日って毎年同じ様な内容になっちゃうんだよね。

ネクタイとかYシャツとか、結局仕事で使う様な物。

だから、何の気なしに二人に尋ねてみた。


すると亜沙美は何か思い付いた様な顔をして、ニヤリと笑った。

「いい事考えたよ綾。」


「亜沙美の"いい事"なんて聞かない方がいいんじゃね?」

隣で呆れ顔をしている敦。

「うるさいなぁ敦は。ちょっと黙ってて。」

そう呟くと、私の手を取り瞳を輝かせながら言った。


「例の助教授に一緒に選んで貰えばいいじゃん、父の日のプレゼント。」



「え?ええーー?!」