さよならとその向こう側


まずい。

なんだか顔が熱い。

きっと赤くなってる。


でも、敦はそんな私を見ても何も言わず、
「ふー。」
なんて深呼吸を始めた。


「…敦?」


気になって呼び掛けると、敦にしては珍しく、にっこり微笑んだ。

それからゆっくりと話始める。


「…あのさ、もう一年以上経つけど、俺が元カノと別れた理由は綾なんだ。

綾が、神田実に一目惚れしたって騒ぎ始めてから、毎日なんかイライラしてた。
そしたら、元カノが言ったんだ。
“それって綾さんが好きなんじゃないの?”
って。
確かに、元カノの前で綾の話を沢山してた様な気がするけど、自分でも分からなくて……。曖昧な返事しか出来なかった。

でも、女って感がいいんだよな。元カノは、俺が綾を好きなんだって確信したみたいで。しばらく連絡が取れなくなった。

1ヶ月ぶりに電話が掛かって来たと思ったら、別れようって言われた。新しい男が出来たからって。

……でも、全然ショックじゃなかったんだ。
むしろすっきりして。


で、やっと自分の気持ちに気づいた。」





敦の顔は真剣で、私を見つめる瞳は熱っぽくて、ドキドキしながら聞いていた。