さよならとその向こう側


「やっぱり腫れてるな。」

敦はそんな事を呟きながら冷却シートを開け始める。

「ありがと、自分でやるよ。」

これ以上触れられているのが恥ずかしくなって、慌ててシートを受け取る。

「私肌強いから、シート貼っても全然大丈夫。」

なんだか敦の顔が見れなくて、ごまかす為にペラペラと話した。

「敦、私もう大丈夫だから、仕事戻っていいよ?川上さんの事も、気にしなくていいから。こんなの冷やせば直ぐ治るし。」


変に意識してしまう。

私おかしい。

こんな気持ちでいる事、ばれたくない。


でも、敦は私の前に座ったまま動こうとしない。



「―――綾。」


「…な…に?」


名前を呼ばれてドキッとした。

でも敦の顔を見れないから、俯いたまま返事をした。



「さっきの話。驚いたよな?
ごめんな、あんな形で伝える事になって。本当は、綾がちゃんと立ち直るまで待ってから、伝えるつもりだった。」


「さっきのって――。」


やっと見れた敦の顔はとても真剣で、その表情にドキドキしてしまう。


「やっとこっち向いたな。」


ドキドキしてるのがばれたの?
私と目が合った途端、真剣な表情を崩し少し余裕な笑みを浮かべるから、焦ってしまう。