さよならとその向こう側

「店長、私…。」


涙を流しながら敦を見つめる彼女を見て、やっと気が付いた。

前に会った時も敦の事を見つめていた。

この子、敦が好きなんだ。


そう考えれば、私のせいで敦が面接に行けなかった事を、自分の事の様に怒るのも納得出来る。

まぁ、だからって平手打ちはないと思うけどさ。

でも、“好き”の気持ちだけで行動しちゃうあたり、とってもよく分かる気がするし。


涙目で敦に訴える彼女が、なんだか可哀相に思えてくる。


「敦。私大丈夫だから、もういいよ。とりあえず医務室で冷却シート貰って冷やしてくるから。」


これ以上カフェテリアにいるのも気まずいし、頬もジンジンして痛かったから、その場を離れようとしたのに――。



「待って綾。俺も一緒に行くから。」

そう言って、敦は私の手首を掴んだ。


「え、でも。」


…ほら、彼女がすごい目で見てるよ。

敦、気づいて!