さよならとその向こう側

「店長…。」
「敦、良かったよ来てくれて。とりあえずこの子落ち着かせてよ。」


亜沙美がほっとした様に敦に頼んでいた。


でも私は、何も言えなかった。


あの時以来だ。

敦に頭を撫でられたの。

実さんに別れを告げて来いって諭されたあの時。


あの時と同じ。

敦の手は、想像以上に大きくて、優しくて…私を慰めてくれる。


「敦。私休憩終わりだから…後よろしくね?

それと、綾の店の店長には遅くなるって伝えておくから。痛々しいその赤みが引くまで売場には戻らない方がいいんじゃない?」


私の赤くなった頬を摩りながら、亜沙美は心配そうな顔をした。


「ありがと、お願いね。」

「了解。詳しい話は敦から聞いておきなね。」


そう言い残し、亜沙美は慌ててカフェテリアを後にした。