さよならとその向こう側


これって、プロポーズなんだろうな。

心のどこかでそんな事を思った。


考え直してくれと訴える実の胸に飛び込めば、どんなに楽だろう。

きっと私は幸せだろう。

二人でカナダに行って、大きな庭のついたマイホームとか建てて、死ぬまで一緒にいられたらいいのに。


実。

実。

やっぱりあなたを愛してるよ。



返事をしない私を、実は抱き締める。

「彩夏側にいてくれ」

「愛してる」

何度も何度も言ってくれたけど、私だって愛してるよ。

だからこそ、こうして別れを選んだの・・・


実の言葉に、優しい腕に、いちいち反応して揺れ動く私の弱い心。

だけど、その気持ちを精一杯押しつけて、首を横に振った。



「ごめんね、実。私はあなたの夢を奪いたくないから。」


小さな声でそう伝えた。