さよならとその向こう側


「彩夏・・・?」

不思議そうに私を見つめる実。

だけど、続けなくちゃいけない。


「実。聞いてくれてありがと。今話した通り、お母さんはきっとこの世にはいないと思う。警察もそう考えている。
でも、実際遺体が発見された訳じゃないから。
時効が来るまで、お母さんは指名手配犯のままなの・・・。」

「そうかもしれないが」

「だから、私は実の側にはいられない。」

「彩夏!?それは話が違うだろ?俺は真実を知っているし、彩夏が」

「違わないよ。」

「彩夏!」

「違わない・・・。私がお母さんをかくまってなかったとしても・・・お母さんがこの世にいないとしても・・・そんなの関係ないよ。
私は、逃亡者の娘なんだよ。殺人者の娘なの。

実が研究に成功して、有名になったら、これからだって私達の事を調べる人が現れるかもしれないでしょ?
実際に佐和田教授だって、"金の為に奥さんと結婚した"とかマスコミに言われてた時期があったんでしょ?
私のせいで、実がバッシング受けたり、研究の成果を認めて貰えなかったりしたら嫌なの。」

「そんなのは、彩夏のせいじゃないだろ?!」

「・・・でも、私のお母さんとお父さんなの。

世間からどんな風に思われても・・・私には大切な両親なの。
だから、私には関係ありませんなんて顔は出来ないよ・・・」

「・・・彩夏・・・」


「ごめんね実。
私、実の事まだこんなに愛してる。言わないつもりだったけど、でもやっぱり好きだよ。

でも、だからこそ・・・実には幸せになって貰いたいんだ。」


「何言ってるんだよ?俺は彩夏と一緒じゃないと駄目だって、綾さんとの事で良く分かったから、だからずっと彩夏を待っていたのに。
彩夏にどんな過去があったって、もう今度こそ、ずっと側にいるから。
頼むからそんな事言わないで、俺と一緒にカナダに行って欲しい・・・。」