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綾さんに電話で私の声を聞かれたあの日からずっと、綾さんに別れを切り出していた事。
でも全然受け入れて貰え無かった事。
クリスマスイヴに携帯がなくなった事と綾さんの事故。
私に会いに来てくれた事や、連絡が取れなかった事。
全部話してくれた。
「……意識が戻った綾さんはやっと別れを受け入れてくれたけど、もう彩夏は大学を辞めていて……しかもなんとか思い出した携帯番号にかけても繋がらない。
だから志乃ちゃんに頼み込んだ。『彩夏の居場所か連絡先を教えて欲しい』って。だけど志乃ちゃんは『彩夏が教えてないなら私は教えられない』の一点張りで…。ま、そりゃあそうだけど……
だから今回の事をお願いした。今日彩夏に会うと聞いたから、鍵を渡して欲しいって……。」
「――」
「…半分諦めてた。彩夏はもう、俺の事を忘れるつもりだろうって……。
でも、旅立つ前にどうしても会っておきたかった。
だからさっき、嬉しくてつい抱きしめたりして…
悪かった。突然過ぎたよね?」
――ううん。
そんな事無いよ。
実は申し訳なさそうに謝ったけど私も嬉しかった。
実に会えて、抱きしめられて、
“好き“
が溢れてきた。
――でもそれを伝えられないよ。
実はひとつだけ、話していない事がある。
私の両親の事。


