さよならとその向こう側



「どうぞ。」


「ありがと。」


涙の止まらない私をソファに座らせ、実はコーヒーをたててくれた。


「……これ。」


「ああ、もちろんまだ有るよ。彩夏とまたやり直すつもりだから、捨てたりしないさ。」


差し出されたカップは、二人でお揃いで買った物。
実のマンションに来る度に当たり前の様にペアで使っていた。


綾さんと付き合う事になって、捨てられたと思っていた。



カップを見つめていると、実が目の前に腰掛けた。


優しい瞳で私を見つめる。

「彩夏、まず……今までの事を説明させて欲しい。」

「説明?」


「そう。綾さんとの事とか、彩夏に連絡が取れなかった事とか、大学を辞める事とか……。」


…大学を辞めるのは、やっぱり事実なんだ。

胸がギュッと締め付けられる気がした。

もう、会えるのは、本当に今日で最後かもしれない。


「…うん。分かった。」


だから真実を知っておきたくて、返事をした。