さよならとその向こう側

「…鍵、返しに来たの。」


「…彩夏?会いに来てくれた訳じゃないのか…?」


実の表情がさっと曇る。


でも続けなくちゃいけない。


「…実。私は実とはやり直せないよ。」


どうしても涙が流れてしまうけど、それでも私の決意を告げた。



―分かって、お願い。


私は実の大切な夢を奪いたくないから。

自分の研究した新薬で、沢山の人を救いたいって、いつか話してくれたよね。


私には難し過ぎて研究の事は理解出来ないけど、学会で発表して認められなければ駄目だって事はわかる。


その為に、余計なスキャンダルは無い方がいいに決まってる。




佐和田教授の考えは間違ってないよ。


―――私は、実の側にいては駄目なんだ……。