さよならとその向こう側

暖かく力強い実の腕に包まれて、涙が流れた。


素直に嬉しかった。

実に会えて嬉しかった。



「彩夏………会いたかった。」


耳元で何度も囁かれた。

実も私と同じ気持ちでいた事が伝わって来る。

嬉しくて、私も会いたかったと伝えたくなる。


実の背中に手をまわして、しがみつきたくなる。



でも駄目なの。


やっぱり私には出来ない。

苦しいけど、私は実を愛しているから、これで終わりにする――。


私が側にいたら、実はきっと苦しむ事になってしまう。


「誕生日おめでとう彩夏。……来てくれて嬉しいよ。彩夏に渡したい物があるんだ。」


抱きしめる手を少し緩め、私の顔を見つめながら実は言ったけど、


私はただ首を横に振った。