さよならとその向こう側


――ピンポ―ン…


「…はい。」


え!?


たった一度鳴らしただけなのに、実の声がした。

どうしよう

どうしよう……。

自分がチャイムを鳴らしたのに、返事が出来ない。


だっていないと思い込んでいたから……

心の準備が出来てないよ。


動揺して、緊張して固まっていると、突然目の前のドアが開く。




「…あ…。」


思わず小さな声が出てしまう。


当たり前だけど、そこにはドアを開けたまま私を見つめる実がいて。


久しぶり過ぎて、なんだか気持ちが溢れて来て

“私は実が好き”

そう実感せざるを得なくて
涙も溢れそうになる。




「彩夏……」


名前を呼ばれたと思った次の瞬間







私は実の腕の中にいた――。