さよならとその向こう側

鍵を使ってエントランスから中に入る。


久しぶりに見た管理人さん。

すると、私を見てにっこり微笑んでくれた。


覚えていてくれてる。


――そんな些細な事が堪らなく嬉しかった。



通い慣れたはずのマンションだけど、もう何年も来ていない様で、とても久しぶりに思えた。
ドキドキしながら、緊張しながら実の部屋へと向かう。



――実まだ帰ってないかな?


ふと時計を見直すと、まだ夕方6時。


どんなに早く仕事を片付けても、到底帰宅出来る時間ではない。


どうしよう。


多分まだ留守だろう。

でも、いくら鍵を預かったとはいえ、勝手に部屋にあがるのは躊躇われた。



少し考えて、いないとは思いつつチャイムを鳴らしてみる。