さよならとその向こう側


「ちょ、ちょっと待って・・・」

上手く頭が働かなくて、話の内容が飲み込め無い。



そんな私を気にもせず、志乃はバッグから何かを取り出しテーブルに置いた。


「これ、彩夏に渡して欲しいって。」


「・・・え?」


テーブルに置かれたのは鍵だった。


「鍵?」


「そう、渡された。」

「渡されたって・・・」


「神田助教授に。」


「実・・・に?」


胸が苦しい。ドキドキする。

なんで?

なんで今更こんな物・・・。

だって、これってきっと、実のマンションの鍵・・・。


「実はね、彩夏の新しい携帯番号を教えて欲しいって頼まれたの。」

「私の・・・」

じゃあ、実は私の前の携帯番号に連絡をくれてたって事?


「でも、断ったの。彩夏が教えていないなら、私は教えられないからって。・・・だって、彩夏がまだ神田助教授の事好きなのは分かってたけど、私はなんか許せなくて・・・」

「許せない?」

「そう、あの日、彩夏の過去を聞かされても・・・それでも、彩夏を愛してると言って欲しかった。佐和田教授に逆らって欲しかった。それが、私はどうしても、許せなかったから断り続けたの。
そしたら、これを渡された。マンションの鍵だって。どうしても彩夏に会って話がしたいからって言ってた。」