さよならとその向こう側


佐和田教授が私の事を調べていた事。

お母さんが犯した罪の事。

今もまだ捕まっていない事。


それを、あの日実は聞かされた事。


私と結婚をしても、その事実がスキャンダルとなり大学からも追放されるかもしれない。
研究も続けられなくなるかもしれない。

そう、佐和田教授に言われていた事。


だから、私を愛していると言っていた実が、

最後には綾さんとの結婚を前向きに検討しますと答えていた事。






体がガタガタ震えた。

寒気に襲われた。

コーヒーを持つ指先が冷たい。


「彩夏?彩夏大丈夫?・・・ごめんね、本当の事言い出せなくて。私も、たまたまだけど彩夏の過去を知ってしまって・・・動揺したの。神田助教授の事は教えてあげなくちゃって思ったけど、上手く説明が出来なくて、だから咄嗟に嘘ついて・・・」


見ると、志乃も泣きそうな顔をしていた。


だけど上手く声が出せなくて、必死に首を横に振った。


志乃は悪くないから、謝らないで。


そう伝えたくて。