さよならとその向こう側

「ずるいよね、佐和田教授。まるで脅迫だよね?」



「彩夏、どうしてそこまで知ってるんだ?…俺と教授の話を聞いていたの?」


実は戸惑いを隠せない様だった。



「私じゃなくて、志乃と仲のいい業者の人が。たまたま研究室に入った時に会話を聞いたって。
だから、全部教えて貰った。」




「そうか………何もかも知ってるのか。」


実はキッチンカウンターに寄り掛かったまましゃがみ込んだ。

俯いて片方の膝を立てている為表情は見えないが、肩が震えていた。



…泣いてるの?




「ごめん、彩夏。結婚を考えてる彼女がいるって、説明したんだけど…聞き入れて貰えなくて。

だけど、大学で働けなくなるなんて言われたら…。

今日、本当は彩夏に会うのが怖かった。別れを伝えなくちゃいけないのが嫌で。
しかも泣いてる彩夏を見たらほっとけなくて、抱き締めたくなった。



呆れるだろ?

彩夏より仕事を選んだくせに、最低なのは俺なのに、涙なんて流して。


こんなバカな男の事なんか、早く忘れて……。」

「実!!!」