さよならとその向こう側



また、廊下から声が聞こえてくる。


「あなた、待って!今先生が診察中だから。」

「駄目なのか!?私だって、綾の無事な姿を確認したくて急いで駆け付けたんだぞ!!」


「・・・すぐに終わりますから席を外してくださいって先生が・・・。」


申し訳なさそうなお母さんの声と、興奮気味の父の声。


そっか、お母さんから連絡が入って、慌てて大学から来てくれたんだ。




すると、その様子に見かねたのか、先生が微笑みながら言った。

「今日はこの位にしておきましょう。佐和田さんも、ご自分の状況を理解するのに時間がかかるでしょうし。ゆっくりと体力を回復させながら、これから精密検査を行っていきますからね。異常が無ければリハビリをして、それから退院出来ますよ。」



「状況を理解・・・ですか?」



「そうです。・・・今は一時的に忘れているみたいですが、佐和田さんは交通事故に遭われてこの病院に運ばれてきました。」


「・・・そう、ですか・・・」



そう言われても、ぴんとこない。