さよならとその向こう側

「もしかしたら、綾かもしれん。」


「…え?何がですか?」



「私達が応接室で話している時に綾が来たのなら、デスクに置いてあったはずの君の携帯は、綾が持っているのかも…。」



綾さんが?

何の為に携帯を持って行くというんだ?


「ですが教授、綾さんが私の携帯を持ち出す理由がないと思うのですが?」



「そうかもしれないが、気が動転していたならおかしな事をするかもしれないし……いずれにせよ、連絡がとれないのが気掛かりなんだ。神田君の携帯からなら電話に出てくれるかもしれないからな。どうしても君の携帯が必要だ、頼むよ。」



確かに、あの会話を聞いていたなら、気が動転していただろう。


綾さんを心配する教授の気持ちも分かるし、私自身も携帯は必要だ。



「教授、わかりました。買って来ます。」





そうして、急いで大学を出て携帯電話ショップに向かった。