-プルルル
-プルルル
『もしもし、実?』
二回程コールが鳴ったところで、その声は聞こえて来た。
――間違いない。
あの日、電話の向こうで聞こえた女の声と、同じだった。
そう確信すると、怒りや悔しさが込み上げて来て。
自分でも理解し難い、コントロール出来ない醜い感情に襲われた。
"この女さえいなければ"
はっきりと、そう思った。
『……もしもし、実?どうかしたの?』
純粋に実さんを心配しているのがよく解る、その言葉や語りかける声。
私の心を真っ暗にするその声は、悔しい位澄んだ綺麗なもので。
それが、更に私の心を刺激して、醜い感情が増して行った。


