「お帰りなさい。今日は実さんと鍋でもしようと思って、材料買って来ました。最近寒いし」 「申し訳ないですが、部屋にはあげられません。……ご自宅まで送りますよ。」 俺は綾さんの言葉を遮ってそう言った。 マンションで俺の帰りを待っている綾さんは、俺の存在に気が付くと、いつも捲し立てる様に話を始める。 それはきっと、また別れ話をされるのが嫌だからだろう。 分かってはいるが、正直うんざりしていた。 もう2ヶ月近く……毎日の様に待ち伏せされているからだ。