さよならとその向こう側

卑怯だと思う。


最低だと思う。


自分の立場を利用して、実さんの弱味につけ込んで。

だけど、実さんが"佐和田綾"を傷付ける事が出来ないなら。

上司の娘である私を無視出来ないなら。冷たい態度を取れないのなら。


それを利用しようと思った。


そこまでしてでも"彼女"でいたかった。






いつの間にか、身体の震えも涙も止まっていた。



私は絶対に実さんから離れない。

実さんをふった女になんか、実さんは渡さない。



そう決意したから……。