さよならとその向こう側

どれ位の時間そうしていたのだろうか?


私も実さんも、ただベランダで向かい合ったまま立ち尽くしていた。










「・・・謝らないでいいです。」


意を決して、口を開いた。


「・・・え?」


突然私が発した言葉に驚いた実さんは、困惑した表情で私の顔を覗き込んできた。


「謝らない訳にはいきません。綾さんの気持ちを踏みにじる様な」
「違います!!」

実さんの言葉を遮って、私は自分の気持ちをぶつけた。


「実さんの言う彼女は、別れたと言っていた彼女のことですよね?」


「はい・・・。」


「・・・実さんは、その彼女の事忘れられないと言いました。でも、その彼女の方はどうなんですか?実さんの事をまだ愛しているのですか?」


「それは・・・」


実さんは返す言葉に詰まった。

だって、別れたはずの彼女の事を引きずっているのが実さんなら、別れを切り出したのは普通に考えれば彼女の方。

つまり、彼女には別れたい理由があったから別れたはず。


「実さん?もし、あなたが一方的にその彼女を忘れられないだけなら、私は諦めません。」



「・・・・・・綾さん、でも・・・。」


「実さんの気持ちが私に向いていない事はわかりました。・・・でも、それでもいいです。実さんに一目惚れして、それから片思いが続いて・・・・・・今は私の気持ちも知ってもらえてる。少なからず彼女という立場にまでなれました。だから、これから時間をかけて私の事好きになって貰える様に努力します。・・・だから、謝らないで下さい。」