「忘れられない人がいるんです。」
それは余りにも酷い告白。
予期していたとはいえ、実際に実さんの口から出た言葉だというのを受け入れたくなかった。信じたくなかった。
「・・・・・・聞きたくないです。」
俯いて小さな声で抵抗しても、実さんはやめてくれない。
「すみません、綾さんの告白を受け入れておいて。酷い事をしているのは十分わかっています。ですが、やはり自分の気持ちをごまかす事は出来なかった。」
「・・・・・・・・・」
「先程の電話で聞こえた声は、その彼女の声です。」
ああ、やっぱり・・・。
そう思ったけど何も言えなかった。
頭を殴られた様な衝撃が体中を貫いて、このまま意識を失いそうだった。
止まる事のない涙が、ただただ流れていた。
「本当にすみません。綾さんを傷つけてしまいました。」
何度も、何度も、実さんは私に謝った。


