さよならとその向こう側

綺麗でさっぱりした部屋。


私の嫌な想像は外れて、中には誰もいなかった。


そして、散らかっていると言っていたけど、読みかけの新聞と飲みかけのコーヒーが入ったカップがテーブルに置いてあるだけで、あとは綺麗に片付いていた。


ベッドのある場所だけ本棚で仕切る様に隠されていたが、後は広いワンルームを活かす様に家具が配置されていて、高台に建つマンションの特徴を表した大きなベランダからは、遠くに海が見え、近くには数々の灯りが連なって、素晴らしい夜景が見渡せた。


思わずベランダに出てその夜景に見入ってしまった。


「綺麗ですね。」

そう呟くと


「そうでしょう?実はこの夜景が気に入って、このマンションを衝動買いしまったんです。」


そう言って微笑んでくれた。



さっきから真剣な深刻な表情しか見ていなかったから、それだけで何だか嬉しくなった。