さよならとその向こう側

「わかりました。少し散らかっていますがいいですか?」

「はい!」


少し困惑したような表情だったが、実さんは車のエンジンを付け発進させた。



今日で最後かもしれないけど、でも。

まだまだ諦めたくなかったから。


話を聞いてみて、その内容によっては、私は一歩も引かないと心に決めていた。



車の窓越しに見える街の明かりがとても綺麗で、私は無言のまま窓の外を眺めていた。

実さんも、ずっと前だけを見て運転していた。




やがて、少し街中から外れた高台のマンションに到着した。

地下駐車場に車を停めてエレベーターに乗り込む。


12階の実さんの部屋の前に着いた。


私は少し緊張していた。

中で誰かが実さんの帰りを待っているのではないか?

そんな事を考えたから。


だけど実さんは慣れた手つきで鍵を開けると、

「どうぞ。」

と言って私を中へ入れてくれた。