さよならとその向こう側

「お待たせしました。今、ご自宅の前に着きましたので、出てきて貰えますか?」



大好きな実さんの声。

聞きたいけど、今は聞きたくない声。



「…わかりました。」


そう小さな声で返事をして携帯を閉じた。



私はこれから、別れ話を聞かされるの?


悪い想像ばかりが膨らんで、玄関に向かう私の足は、鉛の様に重たくて冷たく感じた。


寝室で寝ている両親を起こさない様に、静かに玄関を開けると、庭の先にある門の前に実さんの車が停まっていた。