冬の乾燥した空気を浴びた炎はあっという間に燃え上がり、壁を伝ってゆく。
しかし、まだ君の姿は見えない。

炎の渦を眺めながら『八百屋お七』の話を思い出した。
惚れた火消しに逢いたくて、放火を繰り返す乙女。

初めてこの話を読んだ時は、なんて愚かな女だろう、と鼻で笑った。

だが今はお七の気持ちが痛いくらいに分かる。

まさに、僕の気持ちは、お七と同じなんだ。

君に逢いたい。
君に逢いたい。