「やぁ、シールズ!今日も暑いね。」

人影の主は、シールズの友人デニス・クレールだった。
彼は黒曜石のように輝く漆黒の大きな瞳を瞬かせるとニコリと微笑みシールズに向かって大きく手を振った。


「デニスは今日も写生かい?」

「うん。蒸し暑いアトリエの中に篭っているより森の中で風に吹かれながら筆を握っている方が良いものが描けるし…なんたって気分がいいからね。」

「確かにそうだな。どれどれ、今日はどんな絵を描いていたんだ?」

シールズはヒョイと首を伸ばし、まだ絵の具が乾ききっていないカンバスを覗き込んだ。
そこには風に葉を震わす木々の青葉…そして豊かな水を湛えた泉が繊細な筆遣いで描かれていた。
彼は感心したように何度も首を傾げ、デニスの絵を見つめていた。